2017年6月12日月曜日

「ヘブル書講義解におけるルターの神学思想」岸千年著

―最近読んだ本からー
「ヘブル書講義解におけるルターの神学思想」岸千年
発行 昭和36111日 1961    
           発行者 聖文舎
           印刷  精文堂KK
 今年はマルティン・ルターの15171031日の95箇条の提題から始まったとされる宗教改革から500年記念の年を迎えている。今から20年ほど前、結婚して水俣教会に赴任したころ、岳父から、家内の祖父に当たる岸千年先生の著書である本書を譲られ、読んだのであるが、当時内容を理解することはできなかった。本書は、岸先生が京都教会におられるころ、同志社大学を使って研究し、同大学から受けた博士論文であったと記憶する。私は京都にいた学生時代に京都教会に通うようになった者であるが、たまたま銭湯で知り合った統計学であったか、何かの老教授が「あなたは岸千年先生を知っているか」と聞かれたことがある。その後、何度か、岸先生は京都教会に説教に来られ、私も32歳で神学校に入ることになり、まる一年ほど神学校でもお世話になったのだが、先生は天に召され、そのとき先生の著訳書を集めたりしたのだが、不思議な縁でその孫にあたる家内と結婚することにもなったのである。
牧師となって23年ほどになるが、宗教改革500年でもあり、久しぶりにルターセミナーにも出、この度、本書を何とか通読することができた。先輩の牧師先生方からは、ルーテル神学校長初期の頃の岸先生は極めて厳しい校長であったことを聞かされている。しかし、私がお目にかかった先生は、いつもにこにこした、元気のいい好々爺であった。京都時代に薫陶を受けた婦人会のある姉妹から伺った、岸先生から聞いて、耳に残っている言葉は、「あれもこれもはできない。あれか、これかでなければならない」というものであった。少し、前置きが長くなってしまったが、本書を読んでの感想を記したい。この書は、1961(昭和36)年に発行されている。岸先生の生涯は明治311898)年115日生まれで、1989(昭和64年、平成元年)630日逝去であるが、91歳で天に召されるまでほぼ生涯現役であった。であるから、この書は、先生の油の乗り切った60歳ころに完成されたものといえる。ルターの「ヘブル書講義」(1517年~1518年)を中心に、ルターの神学、信仰、聖書解釈、人間観やキリスト論、罪観等々、いわゆるルターの神学の骨子を、2000年の歴史の中で洞察し纏めたものといえる。日本にルターを紹介した草分けでありその代表的著書といえよう。ルターの「聖書のみ」「信仰のみ」「恵みのみ」の真意が理解できた。今ではキリスト教専門の古本屋でしか、手に入らないが、3000円ほどで入手できる。



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